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2020/6/27

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

配備停止のイージス・アショア
「ブースター落下」が理由?

すでに新型≠ナはないイージス・アショア 迎撃ミサイルは時代遅れ

 「亡国のイージス」(福井晴敏著、1999年)を覚えてますか? 海上自衛隊のイージス艦が乗っ取られ、首都に危機が陥る国防問題を絡めたサスペンス小説。映画やコミックにもなったので題名はご存じのはず。では、イージスって何? 本来、船に積む迎撃用ミサイルのことで、先日河野太郎防衛相が突然、イージス艦用を地上型にした「イージス・アショア」の配備計画の停止を発表。その理由は、ブースター落下問題というけれど、なんだか釈然としないという読者も多いのでは? ミサイル防衛の仕組みや各国の思惑など、この問題の全体像を理解すれば、問題の本質が見えてくる。

金食い虫のミサイル配備

 日米安保条約に基づいて、日本に飛んで来るミサイルに対する防衛システムの対象国は北朝鮮、そして中国とロシア。ミサイルで攻撃された場合、まずは海上のイージス艦、そして陸上のイージス・アショア、最後はPAC3(パトリオット)という迎撃型ミサイルの三段構えで防御する。日本海で列島全部をカバーするにはイージス艦なら常に2隻が必要になる。1隻1500億円するが、東シナ海で海洋進出を強める中国対策用にも必要だから、まもなく8隻体制になる。

 今回ニュースになったアショアは1基800億円でイージス艦に比べるとかなり安い。海上とは異なり悪天候の影響も受けにくく、NATO(北大西洋条約機構)軍もすでに配備している。2017年にトランプ米大統領の押し売りで急に配備が決まり、萩市(山口)と秋田市の自衛隊演習場に置くことが決まったが、周辺対策費がだんだん膨らんで運用経費は総額4500億円に増大。特に秋田では、防衛省のずさんなレーダー角度データ計算間違いや説明会での職員居眠りなどもあって地元住民が紛糾。昨夏の参院選では自民現職候補が落選の憂き目に遭い、菅官房長官も設置地を「ゼロベースで見直す」といったん後退せざるを得なくなった。

なぜ、見直しに?

 今回、配備自体を見直すことになった理由は、迎撃ミサイルを打ち上げるための推進装置であるブースター落下の問題。当初、「切り離し後、演習場内に制御して落とす」と同省は明言していたけれど、突然飛んでくる相手のミサイルに打ち上げ角度や距離の範囲をあらかじめ制限して縛りを掛けるなど不可能。すべて自動制御にすれば、電子回路や推進装置の大改修に12年2千億円の試算が出されていた。

存在アピール河野防相

 河野防衛相の突然の発表に、野党は「英断」とする一方、身内の自民党国防部会は「聴いてない」と真逆の評価。外相時代は対韓強硬路線で評価された河野氏も、1年前に横滑りで防衛大臣になってからほとんど目立たず、来年の次期自民党総裁選を目指す立場だから、ここは「決められる政治家」としての点数を稼ぎたい思惑も。「ブースターの落下リスクは最初から分かっており、断念するために表向きの理由に使われただけ」という見方も強い。合理主義者の河野大臣だけに、防衛予算を「時代遅れの迎撃ミサイルを配備するよりも、現実に起こりうる危険性が高いサイバー攻撃への防御に投入すべき」という持論の実践という訳だ。

 自民党国防部会の真の狙いは、すでに旧型になりつつあるイージス・アショアで防御するより、ミサイル攻撃に先んじて相手の基地をたたくための装備を充実させること。「戦争放棄を唱える今の憲法でそんなことできるの?」と思うかもしれないが、過去の政府見解から「相手がすでに攻撃体制に入り、他に防衛手段がなければ、自衛のための先制攻撃は許される」というのが与野党を通じた国会での認識。当然、配備地は敵に先制攻撃されるリスクも増す。沖縄の基地問題からも分かるように、用地取得や新兵器配備で周辺住民に「全く迷惑を掛けない」のは幻想に過ぎず、実際は保証金で解決するしかない。

北のミサイル手強い

 では、北朝鮮ミサイルの実力はどれほどか?16年から翌年に掛け、3度の核実験と40発の弾道ミサイルを発射し、日本国中にアラートが鳴り響いたことを思い出してほしい。すでに大小あわせて1千発以上のミサイルを所持していると言われる。ロシアが作った不規則弾道ミサイル「イスカンデル」の改良型も持っていて、これはイージス艦のミサイル「SM3」では迎撃できない。相手の潜水艦が海中から発射する「SLBM」に至っては、米軍が韓国に配備しているTHAAD(大気圏外で使える終末高高度防衛ミサイル)でも阻止できない。

 結局、北朝鮮のミサイル攻撃を防ぐには@米国製最新防衛兵器A成層圏内の低空警戒衛星Bミサイル基地への先制攻撃─しか手がないことになる。

押し売り屋トランプ

 トランプ米大統領は、同盟国に軍事費を肩代わりさせるのに熱心。特に米軍駐留経費の増額吹っかけと、旧式兵器の押し売りが得意な武器商人だ。日本はステルス戦闘機「F35」(1機約100億円)を100機購入する契約をし、イージス・アショアもすでに契約額1787億円のうち125億円を支払い済み。お金は返ってこないばかりか、もっと高い兵器購入に振り替えられることになりそう。

 トランプ大統領にすれば、「盾」を意味するイージスに代わり、「矛」つまり攻撃用の中距離ミサイルを日本に配備できれば、「損して得取れ」で万々歳なのだ。

 米中貿易摩擦の裏では、新冷戦ともいえるサイバー攻撃合戦とロシアも巻き込んだ宇宙空間での陣取り合戦が進行中。自衛隊はこの両分野で周回遅れの状態。今どき、イージス・アショア配備計画停止で国民が一喜一憂している場合ではない。

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