週刊大阪日日新聞

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2020/7/25

崩壊防げ 新型コロナ禍の介護現場

 新型コロナウイルスの感染拡大で、医療と並んで感染リスクを伴うのが介護の現場だ。高齢者や障害者に寄り添う介護の仕事では、日常的に施設利用者との密着は避けられない。現場では防護服やマスク、消毒液なども不足しがちで、感染症に関するノウハウが蓄積されているわけでもない。介護施設の倒産や閉鎖が増える中、国や自治体も介護現場に目を向け始めたが、感染拡大の第2波が来る前に、介護崩壊を防ぐ支援体制の構築が急がれる。

「どうすれば」困惑の現場

具体的な指導なく手探り

事務所で電話を受けるえんじゅケアサポートの槙代表=大阪市城東区
▲事務所で電話を受けるえんじゅケアサポートの槙代表=大阪市城東区

 クリアファイルのフェースシールドに二重手袋、雨がっぱ。5月1日、病院に設置されたテントの外に、急ごしらえの防護服姿で立っていたのは、介護支援専門員の東郷明子さんだ。社会福祉法人三秀會(大阪市生野区)の新巽地域総合相談窓口で働く。三秀會は特別養護老人ホームを運営しており、デイサービスや居宅介護の事業も展開している。

■移送手段に課題

 前日の4月30日、東郷さんは車椅子が必要な利用者に付き添って別の病院に連れて行った。入院前の検査で利用者に37・2度の熱があり、肺に影も見つかったため、新型コロナ感染の疑いがあると判断されて入院を断られた。保健所に連絡したが、PCR検査が可能なのは10日後との返答。困惑は隠せなかった。

 結局、地域の福祉関係者らの尽力で検査は可能になり、東郷さんが送ったが「誰がどうやって利用者を病院まで連れて行くのか」という課題が残った。

 伝えられた検査結果は陰性。しかし、仮に利用者が感染していた場合、東郷さんだけでなくヘルパーや訪問看護師など、関わった介護関係者は濃厚接触者となり、所属する施設も休業に追い込まれたかもしれない。

 東郷さんは「普段から人手不足なのに、感染して休む人が増えれば、介護する人がいなくなる。感染の疑いのある人にどう対応し、移送手段をど う確保すればいいのか」と戸惑う。

■利用者が陽性

 実際に一定期間、現場を離れざるを得なかったのは居宅介護事業所「えんじゅケアサポート」(同市城東区)の槙敦子代表。利用者の同居家族2人が新型コロナに感染したことを知り、取り残された利用者を訪ねた。

 周囲の反対もあったが、利用者は要介護3で車椅子が必要な高齢者。1人にしておけないと判断し、靴下にもカバーをするなど完全防備で駆け付けた。

 しかし、後に利用者も陽性と判明。槙さんは幸い陰性だったが、訪問後の一定期間は利用者やスタッフとは別の場所で、1人で可能な仕事に専念した。

 「現場では食事や入浴、排せつの介助があり、濃厚接触者にならざるを得ない。どこまで何をしたらいいのか、具体的な指導がない」と手探り状態は続いている。


上半期の倒産件数が最多

コロナ追い打ち 再開困難

介護現場の厳しい状況を訴える大阪市介護支援専門員連盟の有村副会長
▲介護現場の厳しい状況を訴える大阪市介護支援専門員連盟の有村副会長
■経営にダメージ

 東京商工リサーチが今月7日に発表した、2020年1〜6月の全国の介護サービス事業者の倒産件数(負債総額1千万円以上)は58件に上り、介護保険法が施行された00年以降で最多となった。

 ヘルパー不足が深刻な訪問介護事業者は、前年並みの31件(前年同期32件)と高止まりし、競争が激化している通所・短期入所介護事業者は18件(同13件)と増加。地域別では東京都の7件と並んで大阪府が最多だ。新型コロナ関連の破綻は1件にとどまるが、「下半期に向けて増勢を強めることが懸念される」とみている。

 大阪市介護支援専門員連盟の有村哲史副会長は「もともと経営状態がよくないところに、(新型コロナが)追い打ちをかけた。短期療養してもらうショートステイが減り、経営にダメージを与えている」と明かす。

 通所で入浴や食事の介助、リハビリなどを行うデイサービスも、厚生労働省から「できるだけ来ないように言いなさいという指示があった」。深刻なのは、倒産は破綻した事業者の一部であり、数字として現れていない閉鎖した事業者も少なくないことだ。

■徐々に目向く

 施設入所者や訪問先の利用者の感染の不安も大きい。介護サービス事業者は、感染症対策のノウハウが不足しており、有村副会長は「区単位で研修会を行っていたが、集まりにくくなった。どういう基準を守れば良いのか、ガイドラインを出してほしい」と要望する。

 国や自治体は、遅まきながら介護現場に目を向け始めた。大阪市では要望があれば感染症対策の研修に応じ、ホームページでノウハウ動画を見ることも可能になった。

 医療従事者に配布していた雨がっぱの支給も開始したが、雨がっぱはあくまでも代用品にすぎない。国が大阪府を通して行う防護具などの助成の詳細はこれからだ。

 松井一郎市長は「介護事業者は、高齢化社会の福祉分野を支えていただいている。設備や医療装備品についても足りない場合はいつでも連絡を。守るためにできる限り対応する」と会見で決意を語った。

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