2020/11/14
コロナ禍の運動不足にご用心! 巣ごもり高齢者に黄信号
「疲れやすい」「体重減った」はフレイルかも

▲健康体操に挑む高齢者たち
厚生労働省によると、2019年の日本人の平均寿命は女性87・45歳、男性81・41歳で、女性は7年連続、男性が8年連続で過去最高を更新した。しかし、喜んでばかりもいられない。80歳を超えても頭脳明晰、肉体的にも元気な人がいる一方、要介護の人も増えているからだ。現在、『平均寿命』と健康な生活を送れる『健康寿命』の差は10年で、この数字は要介護状態が10年続くことを表している。どうせなら、「健康な状態で天寿を全うしたい」と誰もが思っているはず。その健康と要介護の間の段階をフレイルと呼ぶが、特に今、コロナ禍で活動不足になっている高齢者は多く、心配だ。この「フレイル」を正しく理解し、予防法を学び、健康長寿を全うしたいものだ。
体の状態測るものさし
川崎医科大 総合老年医学教授 杉本研さん

健康長寿を達成するには、病気だけでなく、身体面、精神面、社会的な面を良い状態に維持することが大切。
同年齢であっても健康な人もいれば、寝たきりの人もいる。つまり、年齢は判断材料にならず、高齢者のからだの状態を正しくとらえるものさし≠ェ必要で、それがフレイルだといえる。フレイルは要介護(身体機能障害)になりやすいが、健康な状態にも戻りやすい虚弱な状態を指す。
「低栄養状態」→「筋肉量の低下」→「運動量の減少(基礎代謝の低下)」→「食欲・摂食量の低下(消費エネルギー増加)」―の悪循環によって引き起こされる。
フレイルを進行させないために、「転倒・骨折予防」「筋肉向上」「認知症予防」「気道感染予防」「口腔ケア」を心がけることが大切。
フレイルは生活習慣病(糖尿病・高血圧)との相関関係も認められており、また手術後の生存率にも大きく影響する。65歳まではメタボ対策が必要だが、75歳以降はフレイル対策が重要になる。

「口」の衰えで加速
歯学博士 虫本栄子さん
口腔機能は脳の活性化やストレスの改善に直結していると言われる。「食べること」は食物をかみ砕き、飲み込めれば十分なのではない。「いかによく噛める歯があるか」「いかによく噛むか」が大切。身体機能が弱り社会活動ができなくなる前に、まずは日々の咀嚼(そしゃく)の質を高めることが重要。
運動と適切な栄養摂取
森ノ宮医療大 保健医療学部 理学療法学科助教 杉本圭さん
加齢にフレイルが加わるとバランス能力が低下し、転倒の危険が高まると言われる。転倒がきっかけになり活動がおろそかになると、フレイルの悪化も。フレイルの予防や改善には運動療法が重要。
机に片手をつき片足立ちをしたり、スクワットをしたりするなど筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動に取り組むとよい。続けることが大切で、運動を12週間続けて得た効果も、やめると24週間後には運動前の状態に戻ってしまう。
運動の一方、食生活はタンパク質の摂取を。筋肉増強効果や骨格筋量を増やす効果が得やすくなる。タンパク質とビタミンDが特に重要。

@片足立ち(バランス能力を付ける) 左右1分間ずつ、1日3回行う
Aスクワット(下肢能力をつける) 深呼吸をするペースで5〜6回繰り返す。1日3回行う。動作中は息を止めない。ひざに負担がかかりすぎないように、ひざは90度以上曲げない。太ももの前や後ろの筋肉にしっかり力が入っているか、意識しながらゆっくりと。
高齢者の6人に1人が低栄養状態
森ノ宮医療大 保健医療学部 看護学科教授 南部登志江さん
2017年の国民健康・栄養調査で、65歳以上の高齢者のおよそ6人に1人が低栄養であることが判明した。低栄養になると筋肉の量が減り、転んで骨折する危険性が高くなる。栄養をしっかり摂るには、よくかむ、飲み込むといった口の機能の虚弱化「オーラルフレイル」の予防が大切。高齢になると健康に関する注意事項を「メタボ」から「フレイル」へチェンジを。
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