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2021/4/10

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

東京五輪 ホントにできるの? 政府、IOC─。それぞれの思惑は何か

コロナ感染拡大中の東京五輪 開催強行の裏には何が


▲東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる国立競技場

 来週予定されていた大阪市での東京五輪聖火リレーが中止に決まった。府内他市でのリレーは感染防止に配慮し通常実施の予定だが、五輪開催に暗雲を投げかけそうだ。菅首相は「コロナに人類が勝利した証し」と、政権浮揚の一手としてお祭りムードを演出。是が非でも五輪開催で支持率回復をもくろんでおり、今や「政権の命運を五輪が握る」と言っても過言ではない。国内の各種世論調査では、予定通りの開催を望む声は3割以下で「反対」は過半数の56%前後。英独なども同様の結果だ。

 本当に五輪は開催できるのか。それぞれの思惑を明るみにすることで、問題点を整理してみよう。

トラブル続き「呪われた五輪」

 「40年ごとに問題が起きる呪(のろ)われた五輪」。こう番記者相手に軽口をたたいたのは麻生財相。1940年の夏季東京・冬季札幌の開催返上、1980年夏季モスクワの西側諸国ボイコット、そして今夏季東京の順延を指した例えだ。

 メイン会場となる国立競技場の建て替えで、建設費用の膨張が相次いだ問題。大会シンボルマーク選定の盗作騒ぎ、都内の競技会場建設予定の白紙撤回。突然、マラソン開催地の北海道への変更…。この間、五輪要人のトラブル辞任も日常茶飯事のように起きた。

復興五輪の理念はどこへ

 東日本大震災から2年後の招致決定に、安倍総理は「コンパクトな復興五輪」を掲げたが、当初見積もった7300億円は昨年時点ですでに倍以上。施設建設、運営に絡む大手のゼネコンや広告代理店は「どうせ親方日の丸」(国や都がバックに付いているから「金は出て来る」という意味)と、資材や人件費の高騰を理由にどんどん費用を上積んだ。結果、今や総額は1兆7000億円に膨れ上がり、東京都はそのうち7170億円を税金で賄う。さらに会計検査院の指摘では、関連費用を含め「すでに3兆円」との試算もあるからたまったものではない。

 ビートたけしさんは近著「コロナとバカ」(小学館新書)で「そのうち五輪開催に手を上げる都市はなくなるんじゃないか? そろそろニッポンはお祭り依存体質から抜け出した方がいい」と、冷ややかに笑い飛ばしている。

赤字必至の大甘想定

 コロナ禍の東京五輪は、いったいどんな大会になるのか。当初、780万人の観客を見込み、うち100万人が外国人だったが、海外からの観客受け入れはすでに断念。チケット収入で見込んだ900億円は750億円に減った。裏を返せば「仮に無観客でも五輪をやる」という意思表示に他ならず、チケット減収はこの程度でとどまらない。組織委で賄えない赤字は全て都の負担になる。

 感染防止策はどうか。五輪とパラリンピックで海外から1万5千の選手・スタッフ・役員と、3万5千の報道陣の来日を見込む。4月からテスト大会と呼ばれるプレ開催が予定されているが、「もし競技関係者に感染が拡大したら本番に影響する」との思惑から、現時点では開催自体が危ぶまれている。競技によっては最終選考を兼ねているから影響は大きい。本番の来日報道陣数を絞る基準もないし、大会スポンサーの人数制限はさらに難しい。

矛先鈍いメディア

 海外から見れば、大会の要である組織委が過去不人気ナンバー1宰相だった森喜朗前会長(83)と元財務事務次官の武藤敏郎事務総長(77)という組み合わせ自体がうさんくさいと見えていた。JOC理事に元電通専務が名を連ねていたのを見ても分かる通り、競技会場運営は2人と関係良好の電通や博報堂など知名度高い大手広告代理店がベッタリ。その運営経費や人件費はほぼ言い値で、とてもスポーツの祭典としてアスリートファースト(競技者優先)になっていない。

 五輪運営に国や都から約1兆円もの税金が投入されるのに、費用内訳の透明性も低く、大手メディアがもっと追及するべきテーマだが、残念ながらメディア各社も五輪オフィシャルスポンサーとして相乗りで名を連ねているから矛先が鈍い。

IOCは国際機関ではない

 1964年の東京五輪は気候の良い10月だったが、今回の五輪は炎熱地獄の真夏の19日間。加えて33競技339種目を消化する過密日程だ。

 これはすべてテレビ放映権を持つ米NBC社の都合。同社は2032年までの夏季冬季の大会放映権を握り、契約額は6大会で計7800億円。国際五輪委(IOC)という名称から、公の国際組織とイメージしてしまうが、実は国連のような国際機関ではない。単なるスポーツ興行主で、ドル箱の夏季大会の収益の中身は73%を放映権料、18%を協賛スポンサーから得ている。つまり、IOCにとっては五輪さえ開かれれば腹は痛まず、無観客で日本側が痛手を被るのは知ったことではない。大会関係者向けにIOCが「中国からのワクチン提供申し出を受ける」とご満悦なのも開催ありき≠フ姿勢に過ぎない。

 ただ、こうした状況に米NBC社も嫌気が差したのか「新型コロナの恐怖のさなかに、東京五輪リレーがスタート。火を消すべきだ」と批判している。

 五輪を開催するかどうかの決定権はIOCにしかない。仮にIOCが中止を判断しても、開催国は規定により損害賠償請求を起こせない。同じように開催国が大会返上を申し出てもIOCへの違約金は生じない。過去に戦争などで五輪が中止されることはあったが延期はなく、今回の東京が初ケース。米デンバー冬季(1976年)は住民投票で否決され、開催返上している。東京の返上判断は今からでもけっして遅くはない。

「選手がかわいそう」は本当か?

 五輪の賛否を聞くとき、「中止になると、頑張って代表になった選手がかわいそう」との声がある。私は長くスポーツ記者をしており、「本当にそうか?」の疑問を感じていたので、東京のある有力競技団体役員に匿名を条件に話しを聞いてみた。

 同氏は「まともに開催される五輪ならともかく、今回の東京大会はコロナリスクが高すぎる。各国からの代表選手がそろうかも未知数」と分析。「バブル方式と言って、各競技団体ができる時にできる国でそれぞれに世界選手権を開けばよい。選手は五輪に代わる大会≠フ位置付けなら、十分納得して力を出せる。短期間に多数のアスリートを東京に集める必要は全くない」と明快だ。

 何をか言わんやの五輪開催一直線での大会狂想曲だ。

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