週刊大阪日日新聞

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2021/4/10

コロナ禍で資産を増やす億万長者

 新型コロナウイルスによって実体経済が落ち込んでいるにもかかわらず、株価だけは絶好調だ。「いつ仕事がなくなるか」の不安を抱える人々をよそに、このコロナ禍で資産を大きく膨らませた人々がいる。国際的なNGO(非営利組織)のオックスファムによると、世界のトップ富豪10人はパンデミック中に合計5400億ドル(約56兆6千億円)もの資産を増やした。なぜこんなにも格差が広がるのか。読者と一緒に探っていきたい。

 「世界の富裕層の上位2100人の資産が、世界人口の6割にあたる46億人分の資産を上回る」─。こんな衝撃的な事実が昨年1月、オックスファムの報告書で明らかになった。トップ1%が世界の富の大半を握る≠ニいう話はこれまでも耳にしたことがあるが、現実はそれよりもはるかに少ない富豪たちに世界の富が集中しているようだ。

 それは一体、どんな人物たちか。まずは日本の上場企業の経営者たちがどのくらい稼いでいるのかを見てみよう。

 東洋経済新報社の役員四季報2021年版によると、報酬額1位はセブン&アイHLD取締役のJ・Mデピント氏で、その額は24億7400万円。10位のソニー代表執行役会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏で10億1500万円と、上位10人は2桁億円を稼いでいる。サラリーマンの生涯年収が約2億円と言われるが、我々の一生分をたった1〜2カ月で稼ぐ計算だ。このほか有名企業の社長では、トヨタ自動車の豊田章男氏で4億4900万円、ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正氏で4億円、ソフトバンクの孫正義氏で2億900万円を受け取っている。

 思ったよりも少なく感じるが、彼らは自社株などで受け取る配当収入があり、これがでかい。柳井氏と孫氏は配当収入を加えると、それぞれ200億円規模と言われ、いかに桁違いであるかがわかる。

 それでも日本はかわいいもので、米国の経営者に比べれば足下にも及ばない。

企業社長より金融業者

 データはちょっと古いが、米ブルームバーグの「アメリカのCEO(最高経営責任者)報酬ランキング2019」によると、トップはテスラ社のイーロン・マスク氏で約5億9526万ドル(約654億円)。続く2位のアップル社のティム・クック氏で約1億3372万ドル(約147億円)といずれも巨額。一般的に日米経営者の報酬格差は10倍以上の開きがあると言われている。

 ところが、上にはもっと上がいた。何と、この社長たちよりも稼ぐ人々がいる。世界の金融の中心地、米ニューヨークのウォール街の金融業者たちで、その報酬はもはや天文学的数字に跳ね上がる。その代表格がヘッジファンドの運用者たちだ。ヘッジファンドとは、株式市場がどう動こうとあらゆる手法を駆使して収益を上げる運用を指すが、ブルームバーグの報道では、彼らの2020年の稼ぎはチェース・コールマン氏の約30億ドル(約3300億円)を筆頭に、上位15人だけで2兆5千億円規模。一説によれば、この15人の年収の合計の方が、上場企業500社(S&P500)の社長の年収を合わせた額より多いそうだ。

巨額稼いでも低税率

 米国でしばしば問題視されるのが、この金融業者の稼ぎに、低い税率が適用されることだ。米国の所得税は日本と同じように累進課税で、現在は10〜37%の7段階。大企業の社長であれば最高税率37%が適用されるが、それよりも稼ぐファンド運用者には、最高でも20%のキャピタルゲイン(資産売却所得)税の方が適用される。そのことを裏付けるように、大富豪の投資家ウォーレン・バフェット氏は「自分が自分の秘書より低い税率しか国税を払っていないのはおかしい」と指摘している。

 さらにクリントン政権ごろから、米企業は株主利益を追求し、労働者に還元しなくなった感がある。

アンフェアな構造

 企業が純利益をどのくらい株主に還元しているかを示す「総還元性向」という指標があるが、2015年は日本が51%なのに対し、米国は118%(生命保険協会調べ)だった。米企業が生産性を高めて得た利益を、労働者よりも株主に向けていることがわかる。

 手っ取り早く株主に報いるなら、設備投資や賃金を削って利益を残し、その利益を配当や株価を上昇させる自社株買いに注ぎ込めばいい。株主に報い、経営者の成果報酬も上がるからだ。一方、華やかな株価の裏で労働者の賃金は上がらぬまま。このアンフェアな構造が、格差拡大に拍車をかけているのかも知れない。

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