週刊大阪日日新聞

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2021/6/12

人新世(ひとしんせい)の「資本論」がベストセラー 

大阪市立大准教授 斎藤幸平さんにインタビュー

現代の社会の仕組みや利害は1%の富裕層やエリート層の価値観で作り上げてしまった。


▲著書を手に「3.5%の人々が本気で立ち上がれば社会は大きく変わります」と話す斎藤さん

 気候危機、格差が拡大する中、資本主義の際限なき利潤追求に警鐘を鳴らした経済新書「人新世(ひとしんせい)の『資本論』」(集英社新書) が好評だ。著者は大阪市立大大学院准教授、斎藤幸平さん(34)。カール・マルクスの若き研究者で思想を環境保全の観点から捉え直し、「資本主義に緊急ブレーキをかけ、コモン(共有財)を再生してエコロジー・脱成長を実現する必要がある」と訴える。

公正な社会を実現する唯一の選択肢は『脱成長経済』

─ベストセラーになった要因は。

 経済成長を目指す中で長時間労働、格差、不安定雇用、低賃金労働が生まれている。資本主義社会の矛盾が噴き出す中、コロナ禍で格差がさらに拡大しています。

 グローバルな資本主義の暴走が引き起こした気候変動に代表される世界的な環境破壊は深刻で若い世代の人たちも実感しています。これまでの「マルクス本」と違い、マルクスの思想を環境保全の観点から捉え直し、新たな対案を示した点が男女の若者世代に関心を持っていただいたと思っています。

─SDGsは現代版『大衆のアヘン』」と大胆に批判しているのに驚きました。

 温暖化対策をしていると思い込むことで、真に必要とされているもっと大胆なアクションが起こせなくなる。『免罪符』として機能する消費行動は、資本の側が環境配慮を装って私たちを欺くグリーン・ウォッシュ(うわべだけ環境保護に熱心にみせること)にいとも簡単に取り込まれると思うんです。

 マルクスは「資本論」で「資本は、人間だけでなく、自然からも豊かさを一方的に吸い尽くし、その結果、人間と自然の物質代謝に取り返しのつかない亀裂を生み出す」と繰り返し警告しています。

─タイトルの「人新世」とはどういう意味ですか。

 地質学の用語で人類の経済活動による負荷や矛盾が地球を覆った時代を言います。人間たちの活動の痕跡が、地球表面を覆いつくした年代という意味なんです。

─主な気候変動の原因は。

 人工物が地球を大きく変えていますが、飛躍的に増大しているのが、大気中の二酸化炭素です。二酸化炭素は温室効果ガスのひとつです。

 産業革命以降、人間は石炭、石油などの化石燃料を大量に使ったため、膨大な二酸化炭素を排出するようになりました。人類が歴史上に使った化石燃料の半分は冷戦崩壊後の30年間で使っています。

資本主義は自らはブレーキを踏まない
─日本人は資本主義で生活が豊かになりましたが、脱成長を訴えていますが。

 新技術で効率化を図っても、経済成長と環境保護の両立は不可能であると科学者たちも指摘しています。資本主義は人間や自然を徹底的に利用して、利潤を追求します。簡単にいいますと、資本とは、金儲けの運動であり、金儲けを延々と続けるのが「資本主義」です。資本主義は自らブレーキを踏むことはありません。資本主義が行うのは外部への負担の転嫁です。

 公正な社会を実現するための唯一の選択肢が、脱成長コミュニズムだと思います。

晩年のマルクス、エコロジーへ傾倒
─斎藤さんはカール・マルクス研究で権威ある「ドイッチャー記念賞」を最年少で受賞していますね。斎藤さんの著書の影響もあって国内外でマルクス再評価の機運が高まっています。

 150年前にマルクスが著した『資本論』で構想された持続的で平等な未来社会像を追い求める中で、マルクスが晩年に遺した自然科学研究、共同体研究の草稿類も参照しています。そこで分かったことは、マルクスのエコロジーへの傾倒です。

 マルクスが考えたのはアソシエーション(労働者の自発的な相互扶助)を広げる 運動でした。社会主義か資本主義ではなく、その間にあるのがコモンによるコミュニズムです。今も『資本論』の完成を見ずに世を去った希代の社会思想家の真意を読み解いています。

コモンの再生
─誰もが生きていくのに必要な共有財産「コモン」とは。

 コモンはマルクスの基本的な考えです。医療、教育、介護、水、電気などの商品化をやめ、お金を使わずにアクセスできる共有財産を言います。新自由主義のもと、効率化を求め医療や教育の民営化が行われてきましたが、結果としてGDPは増えても実質的な生活の質(QOL)は下がっています。

 資本は自然の時間に合せることができません。作るだけ作って「商品」として売り払い、あとは野となれ山となれです。「大洪水よ、我が亡き後に来たれ!」が資本家のスローガンです。

─私たち一人一人はどのような行動をとればよいのですか。

 環境と社会的基盤が適正に保たれていれば、人々は安全で公正に暮らすことができます。

 資本主義が地球を壊しているという意味では、今の時代は「人新生」ではなく、「資本新生」と呼ぶのが正しいかもしれません。現代の社会の仕組みや利害は1%の富裕層・エリート層が自分たちの価値観に合わせて、作り上げてしまった。そのためには3・5%の人々が本気で立ち上がれば社会は大きく変わります。今のような時代だからこそ、「資本論」を読んで、今とは違う豊かな社会を思い描く想像力、構想する力を取り戻すきっかけとしていただきたいと願っています。

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