週刊大阪日日新聞

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2022/5/28

「自分が自分であるために」

義足女子会ハイヒール・フラミンゴ創設者の手記公開

 昨夏の東京パラリンピックで目に触れる機会が多かった義足―。躍動するアスリートの姿が印象的だったが、一般のユーザーにとっては義足を「見られたくない」意識が少なからずある。そんな気持ちに寄り添おうと、日本で初めて誕生した義足女子会「ハイヒール・フラミンゴ」は大阪を拠点に活動中だ。自分が自分であるために、何度転んでも起き上がります!

 好きな靴をはいて≠ニ創設者の高木庸子さん(享年51歳)は手記にのこしている。活動の原点を取材すると、「無償の愛」が見えてきた。

活動の原点に「無償の愛」


▲ハイヒールの試着を楽しむ高木庸子さん(右)=2019年2月、大阪府四条畷市
「悪性軟部肉腫」で切断

 ハイヒール・フラミンゴのホームページ外部サイトのパシフィックニュースに、高木さんの手記は載っている。タイトルは「下腿(かたい)義足、今日も教壇に立ってます」。

 子どもの頃、大人になったら小学校の先生になりたいと言っていました。勉強が好きだったわけではなく、「なんだか楽しそうだ」という、今思えばかなり能天気な理由でした

 願い(?)かない高校の教師になりましたが、相手はなかなか手ごわい高校生。個性あふれる彼らとの毎日は、まるでジェットコースターかアドベンチャーワールドか。でも「なんだか楽しそうだ」はある意味、はずれていませんでした

 そんな日々を過ごしていた私が、義足になったのは今から4年前。教師となり23年がたっていました。病名は「悪性軟部肉腫」。切断は避けられませんでした

後輩教師の支え

 一瞬で崩れ落ちていった当たり前の毎日、指の間からこぼれ落ちていく何もかも…。教壇に立てないかもしれない不安に襲われる高木さんを受け止めた人たちがいる。手記は続く。

 そんな私に、共に悩み共に過ごしてきた一人の後輩教師から、ある夜、長い長いメールが届きました。「生徒たちに伝えてはだめですか?


▲教え子の卒業アルバムに収まる高木さん(上段右)と井上さん(同左)=井上さん提供

 このまま知らなかったら、あの子たちきっと悲しむと思います。あの子たちがいたから僕たちは一緒に戦ってこれたんだと思うんです」

 彼の思いと苦しみが痛いほど伝わってきました。それでも私は応えることができませんでした。「私はそこまで強くないんです」。そう返信しました

 悩み抜いた彼が、卒業生たちにすべてを伝えたことを知ったのは手術の5日前のことでした。自分の足で出かけるのはもうこれが最後だろうなあと、私は彼と共に卒業生の一人が開いた個展に向かいました。そこには、話を聞いた卒業生たちが集まっていました。「大丈夫!

 先生がしてれくれたように、今度はうちらが先生を受け止めるから」

 強くなくちゃいけない、悲しませてはいけない、受け止めなければいけない。いつの間にか私はそんな風に思い込んでいました。人は人に支えられているということに、私は改めて、いえ、もしかしたら初めてちゃんと気づいたのかもしれません。彼らは最後にこう付け加えました。「でも、白旗は用意しておりませんので。よろしく!」

 行けるところではなく、行きたいところへ行こう!

 生徒たちにいつも言っていた言葉です。だからこそ私があきらめるわけにはいかなかった。私の行きたいところ、それは学校でした

『接吻』をデザイン

 手記の日付は2018年10月1日。当時、京都市の高校教諭だった高木さんが文中で言及した後輩教師≠、本紙記者は取材した。井上翔一さん(39)=現・京都奏和高教諭=。22歳の頃、37歳だった高木さんと一緒に伏見工業高のクラスを受け持った。


▲高木さんの義足を彩った「接吻」のイラスト(ハイヒール・フラミンゴ提供)

 クラスの女子生徒が生活指導部長に注意され、文化祭の舞台に立てなくなりそうになったことがある。高木さんと井上さんは「何とかしてほしい」と生徒をかばった末に、同部長と口論した思い出がある。「ようこちゃん」と生徒に親しまれた高木さん。彼女の口癖は「無償の愛」だった。

 義足ユーザーになった高木さんの自慢話を、井上さんは今でも覚えている。「えーやろ」。切断した左足の義足にプリントした絵画のことだ。グスタフ・クリムト(1862〜1918年)の代表作『接吻(せっぷん)』。強く抱き締め合い、熱くキスを交わす男女。花の咲き誇る楽園が舞台だが、男女のすぐ後ろが切り立った崖になっている。「無償の愛」を注ぐ高木さんらしい義足のデザインと言える。

「先生、おんぶしたげよか?」

 義足でも自分らしく生きる人たち、力強く輝く女性に会いたかった。ところが、義足の人に出会うチャンスはほとんどありませんでした

 あるのは走ることでつながるコミュニティーばかり。それさえ関西にはほとんどありません。義足であきらめたくないこと=走ることだけ? 走らなあかんの?

 高木さんは、大阪府大東市の義肢メーカー「川村義肢」が開いた義足ユーザーイベントに参加した。しかし、女性の姿は皆無。そこで知った現実は、「外には出たくない」「人には会いたくない」「見られたくない」という女性の義足ユーザーが抱くアイデンティティーの喪失感。「義足女子会がしたい」と高木さんは心底思った。

 川村義肢で福祉用具専門相談員として働く野間麻子さん(52)と知り合い、ハイヒール・フラミンゴを18年6月に設立。義足でもおしゃれを諦めない意思を「ハイヒール」に込め、片足で凜(りん)として立つ「フラミンゴ」と合わせた名称を合言葉に、女性の義足ユーザーを迎え入れた。


▲公開された高木さんの手記

 同じ思いをしている人は必ずいるはずです。今、孤独とあきらめの中にいる人に少しでも何かを届けられるかもしれない。つながりが見えれば、きっと前に進めます

 高木さんの手記は次のように結ばれている。

 足は失いました。でも、比べることができないくらい多くのものを私は手に入れました。きっと義足になる前よりずっとずっと強くなっているはずです。階段で私の横を通り過ぎた生徒が振り向いて言いました。「先生、おんぶしたげよか?」。私は今日もアドベンチャーワールドに立っています

爪痕

 高木さんは20年1月26日、病気のため他界した。

 「自分の生きた爪痕を残してやると高木先生は言っていました」(井上さん)

 「寄り添うことを大切にしたいと考え、高木さんの手記を公開しています」(野間さん)


【ハイヒール・フラミンゴ】
 2018年6月に創設した日本初の義足女性のためのコミュニティー。20年3月にNPO法人化。所在地は大阪府大東市の川村義肢大東本社内。会員は義足ユーザー15人をはじめ、その家族や義肢装具士、福祉用具専門相談員など合計79人。オンラインミーティングやランチ会を通して交流を深めている。

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